河野克俊『坂の上の雲』

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河野克俊(自衛隊統合幕僚長)

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新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

明治維新をとげ、近代国家の仲間入りをした日本は、息せき切って先進国に追いつこうとしていた。この時期を生きた四国松山出身の三人の男達―日露戦争においてコサック騎兵を破った秋山好古、日本海海戦の参謀秋山真之兄弟と文学の世界に巨大な足跡を遺した正岡子規を中心に、昂揚の時代・明治の群像を描く長篇小説全八冊。

同じ松山で生まれ育った正岡子規と、日露戦争で活躍した秋山兄弟。子規は病と闘いながら俳諧の革新に挑み、秋山兄弟はそれぞれ日本の騎兵、海軍の技術向上に尽力した。当時最強とうたわれたロシアのコサック騎兵を打ち破るべく、ひたすら仕事に打ち込む兄好古と、文学の世界に未練を残しながらも海軍に入隊し、海軍戦術を研究し続けた弟真之。2人のまじめな努力の成果は、歴史が証明している。誰もが立身出世を目指した時代に、彼らがどうやって自分の人生の意義を見出したのか。そんな視点から読んでみるのもおもしろい。

司馬遼太郎の大河小説の中でも、本書は特に評価が高く、ビジネスパーソンをはじめ、多くの人々に読まれている。改革の時代にこそひも解きたい、そんな1冊である。

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日露戦争を勝利に導いた秋山好古・真之兄弟。俳句改革に命をかけた正岡子規。 伊予松山出身の3人を中心に、明治という時代の明暗と、近代国家誕生にかけた人々の姿を描く、不滅の国民文学。全8巻。 2009~2011年に、3年にわたり、NHKスペシャルドラマ化。秋山真之を本木雅弘、好古を阿部寛、正岡子規を香川照之が演じた。 (一)伊予松山に住む貧乏士族の秋山兄弟、竹馬の友で怖がりののぼさん(子規)。3人はやがて故郷を離れ、学問・天下を目指して東京に向かう。 (二)日清戦争が勃発。陸軍少佐・好古は騎兵を率い、海軍少尉・真之も洋上に出撃。子規は胸を病みながらも、近代短歌・俳句を確立しようとする。 (三)日清戦争から10年、巨大な軍事国家ロシアの脅威におののく日本。病の床で数々の偉業を成しとげた子規は、燃え尽きるようにして逝く。 (四)明治37年2月、日露は戦端を開いた。好古属する第2軍は、遼東半島に上陸した直後から苦戦の連続。真之も旅順港で敵艦隊に苦慮を重ねる。 (五)旅順要塞の攻撃を担当した第3軍は、おびただしい血を流しつづける。ロシアの大艦隊が東洋に向かって発航。要塞は依然として陥ちない。 (六)作戦の転換が効を奏し、旅順陥落。だが兵力の消耗は深刻だった。やがてロシアの攻勢が始まり、好古の支隊に巨大な圧力がのしかかる。 (七)とぼしい兵力をかき集めて、奉天を包囲撃滅しようと、捨て身の大攻勢に転じる日本軍。だが逆襲され、時には敗走するという苦境に陥る――。 (八)ロシアの威信をかけたバルチック艦隊が、ついに姿を現した。戦艦三笠を先頭に迎撃に向かう連合艦隊。大海戦の火蓋が切られる。感動の完結篇。

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)